【こんな症例も治りますシリーズ 590】 高齢猫の『 失明 』も 適切な診断と維持治療で治します

↑ 上の写真は、猫の目の超音波検査画像です。

■ 黒く抜けている円形部分が、眼球です。

■ 円形部分の下方中央に『Yの字型』の白い部分があると思いますが、これが剥離した網膜像です。

■ この超音波検査画像は、上が眼の表面で、下を眼の奥にした断面像です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/428sw6a

 

猫 ミックス猫 14歳 メス(避妊手術済み)

 

 

【 最近、目が見えない 】という事で来院されました。

 

 

◆◆ 動物だと、人間のような視力検査はできませんが、見えているかどうかを判断する方法はいくつかあります。

 

 

★ 動物の眼に指や手のひらを近づけて反応をみる『 威嚇反応試験 』

 

★ 物を落として、眼でものを追うかどうか見る『 綿球落下試験 』などがあります。

 

★ 光を照射して、瞳孔の反応をみる『 瞳孔対光反射試験 』というものもあります。

 

 

 

◆◆ この猫ちゃんに実施したところ、いずれも反応がありませんでした。

 

 

■ 視覚が完全に消失しています。

 

 

■ 視覚がない時は、角膜や水晶体といった光を通す部分に異常がなければ、次に網膜病変を疑います。

 

 

 

 

◆◆ 網膜を調べる場合は眼底鏡や眼底カメラを使います。

 

 

★ 屈折率が特殊で、眼底の網膜を見ることが出来ます。

 

 

★ 網膜血管の走行がおかしく、視神経乳頭という神経が眼内に出ていく部位を除いて、浮いているのが分かります。

 

 

 

■■ これは、網膜剥離を起こしています。

 

 

■ 剥離部分が大きければ、『 眼科用の超音波検査 』でも分かります。

 

 

★ 網膜とは、眼底に広がる光を感じる透明な構造物で、視細胞があります。

 

 

 

★★ 剥離を起こす原因は、猫で多いのが高血圧です。

 

 

# 慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症の合併症で高血圧が起こる場合が多いです。

 

 

 

 

◆◆ この猫ちゃんは慢性腎臓病治療中で、甲状腺ホルモンの血中濃度は正常でした。

 

 

■ 血圧を測ってみると、収縮期が182mmHg、拡張期が163mmHgでした。

 

かなりの高血圧です。

 

 

■ 高血圧治療薬として、アムロジンというお薬を始めることにしました。

 

 

■ 投薬をはじめて4日後、飼主様からの感想は『 以前のように見えているみたい! 』との事でした。

 

 

 

 

■■ 治療が早ければ、網膜と眼底の間にある部分に溜まっている漿液が抜け、視覚を取り戻すことがあります。

 

 

網膜剥離が長時間続くと、網膜変性症になる場合があります。

 

 

 

■ これからも、しっかりと経過観察を行いたいです。

 

 

 

獣医師 増田正樹

 

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